この記事でわかること
- 売却の際に使える税金の免除制度
- 現在住んでいなくても使えるかも?
- 適用条件……住宅ローンなどとの併用不可?
引っ越しや相続で、今住んでいる家が必要なくなってしまった。でも、不動産の税金は複雑でよくわからない……。
そんな方のために、税金が免除される制度をご紹介します。これを知らないと、数百万も税金を払うことになるかもしれません。
住んでいる家を売った時の特例制度
居住用財産の3000万円控除とは、住んでいる家を売却した際の利益を減税する制度です。
通常不動産を売却して利益が出た際には、所有期間が5年以下なら約40%、5年超なら約20%の税金がかかります。
居住用財産の3000万円控除は、この売却利益の3000万までは無税にしますよ、という免除制度です。
- 売却利益が出た場合に減税される制度
知らないと数百万も損をする
では、この3000万円控除を知らないとどれくらい損をしてしまうのでしょうか。
その前にまず、不動産の売却益の計算について説明します。
不動産の売却後の収入(所得)は、税金の中でも譲渡所得に分類されます。
譲渡所得=売却額ー取得費ー譲渡費用
で求められます。
売却額は実際に売れた時の金額。取得費は、購入時の土地の金額+建物の代金(減価償却費を考慮して計算したもの)になります。建物の代金は、築年数を考慮するので計算が複雑になります。また、取得費が分からない場合は、売却額の5%を取得費とみなすこともできます。
(例)2500万円の木造建築物を7年前に購入した場合の減価償却費は、
2500万円×0.9×0.031×7=488.25万円です。
よってこの場合の取得費は2500万円-488.25万円=2011.75万円です。
譲渡費用は、売却時に不動産屋に支払う仲介手数料、印紙代などです。
(例)7年前に4000万円(土地1500万円、木造建物2500万円)で新築を購入したが、離婚により売却することになった場合。消費税・住宅ローンは考慮せず、売却額は土地の値上がりにより5000万円になったとする。
5000万円(売却額)-3511.75万円(取得費)-172.6万円(譲渡費用)=1315.65万円(譲渡所得)
本来、この譲渡所得という1315.65万円の利益に対して、5年超所有した居住用不動産の税率20%がかけられ、1315.65×0.2=263.13万円の税金を払わなければなりません。
ですが、居住用財産の3000万円控除は、この計算式からさらに3000万円減額していいよ、という制度なのです。つまり、
5000万円万円ー3511.75万円ー172.6万円ー3000万円(特例控除)=-1684.35万円
となり、結果がマイナスになったことで利益はありませんでした、よって税金もかかりません、ということになるのです。
これにより、本来払うはずだった263.13万円の税金を払わなくてよくなるのです。
ほとんどの場合、買った家が3000万円も利益を出すことはありませんから、実質的にはマイホームの売却を無税にする制度とも言えるでしょう。
- 売却利益が出ても3000万円までは無税
ただし、確定申告をしないと適用されないのでご注意ください。
住宅ローン控除が使えない? 複雑な適用条件
このように恩恵の大きい3000万円控除は、基本的にはマイホームを売却した際に使える、と考えてもらって大丈夫です。
しかし、この制度を利用すると住宅ローン控除に制限があるなど、細かな条件も設定されています。ここでは代表的なものだけ取り上げていきます。
住宅ローン控除との併用不可?
結論から言うと、居住用財産の3000万円控除を使ってから3年を経過すれば、次に購入する家でも住宅ローン控除は使えます。
というのも、住宅ローン控除の条件に、
居住年およびその前2年の計3年間に次に掲げる譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと。
No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁 (nta.go.jp)
という決まりがあるからです。逆に言うと、居住用財産の控除を受けたとしても、3年を経過すればその翌年の確定申告から住宅ローン控除を申請できることになります。
- 住宅ローン控除との併用は原則不可
- 居住用財産の3000万円控除の3年後は住宅ローン控除可能
住宅ローン控除を受けている家を売っても使える?
もしも住宅ローンを受けている家を売却することになり、居住用財産の3000万円控除を使うことになった場合はどうなるのでしょうか?
この場合は、過去3年に受けた住宅ローン控除分を申告納付する必要があります。
(例)令和5年4月1日に売却し、居住用財産の3000万円控除を使いたい場合。
令和5年分の確定申告期限までに令和2~4年分の住宅ローン控除について修正申告し、本来の税額を納付、令和5年分の確定申告にて3000万円控除を申請すれば大丈夫です。
- すでに住宅ローン控除を受けている場合、申告納付が必要
以前住んでいた家にも使える?
居住用財産の3000万円控除は、原則として現在住んでいないと使うことができません。
しかし、例外もあります。
住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁 (nta.go.jp)
つまり、令和2年3月31日まで住んでいた家だとしても、令和5年12月31日までに売却すれば、3000万円控除は適用できるということです。
- 以前住んでいた家でも適用可能(条件付き)
他にも、一定の親類への売却ではないことなど条件はありますが、住宅ローン控除と期間制限の2つだけおさえておけば大丈夫でしょう。
まとめ
居住用財産の3000万円控除について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。重要な点だけまとめると、
まとめ
- 売却利益が出た時に使える
- 確定申告が必要
- 住宅ローンとの併用は原則不可(3年後は可能)
- 以前住んでいた家でも適用可能(3年前)
となります。
3000万円の控除自体はわかっても、実際の売却額、取得費、譲渡費用の計算はとても複雑です。
とりあえずいくらかかるのか知りたいという方は、下記のお問い合わせフォーム、またはLINE登録から気軽にご相談ください。
居住用財産の3000万円控除と似た制度として、親が住んでいた家を売却する際に減税される、相続空き家の3000万円控除という制度もあります。こちらも別のページで解説しておりますので、ぜひご覧になってみてください。
相続空き家の3000万円控除とは?
亡くなった親から相続した家を売る時も税金の控除があるのをご存知ですか?